資本主義はどこに向かうのか?公開研究会@國學院大學:撮影記録

いつもお世話になっている國學院大學の古沢教授から「貨幣・コミュニケーション・地域の視点から現代資本主義の限界とオルタナティブの可能性、地球環境問題・エコロジー的制約の視点から現代資本主義はどう変わりうるのか、といった論点を柱に立てて、多角的に議論を深めたい」という主旨の公開討論会をお知らせ頂いたので、撮影記録にお邪魔しました。

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ふたたび株の急落や巨大マネー(資本)の変調・流動化に、世界経済は大揺れです。政治的な変調と重なり合って、将来の世界の行く末が見えにくくなっています。本企画のねらいは、昨今話題を呼んだトマ・ピケティ『21世紀の資本』が提起した資本主義の矛盾(格差・不平等の拡大)に対して、その資本主義の先をどう見通すかに焦点をあてています。あまりに大きなテーマなので、数時間の研究会では消化不良にならざるをえませんが、変調に揺れる経済に対してあえて大テーマを掲げた意味はあると考えています。

<概要>
*日時:2016年2月11日(木・祝)13「30〜17:30
*場 所: 國學院大学渋谷キャンパス 120周年記念2号館 1階2102教室
*参加費: 無料

<状況>
*報告:
・西部 忠氏(北海道大学大学院経済学研究科教授、進化経済学)
『貨幣・コミュニケーション・地域の視点から』
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第1報告は、3つの柱から問題提起しています。導入は現代のグローバリゼーション(資本主義)の解説(多少とも専門理論や学説を下敷きに展開)、そして教育が投資(人的資本論)としてしか考えない風潮の歪みを論じています。次に脱工業化とサービス・情報化に移行した現代経済(情報・金融資本主義)の歪み、一元的マネー(貨幣)経済がもつ危うさを批判しつつ、交換を支える貨幣の再構築へ向けた方向性(地域通貨、多元的交換・コミュニティ形成ツール)が提示されました。

・古沢広祐氏 (國學院大學経済学部教授、環境社会経済学)
『資本主義が転換する契機とは ― 環境・開発レジーム形成の視点から』
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第2報告では、資本主義を論じる視点・論点が多岐にわたることを踏まえ、ピケティの格差・不平等の分析が継続的に展開されている動きを紹介しました。それは大きな波紋を広げており、米国のサンダース旋風(民主党候補)に通じています。紆余曲折はあるものの、極点にまで達した新自由主義的資本主義(62人の富豪が世界人口36億人分の資産を保有)は調整局面にあり、偏狭なナショナリズムやファシズム的に傾斜するか、より公正で民主的な制度形成に向かうのか微妙な局面にある点にもふれました。方向性としては、旧来の国家制度だけではない多様な価値と政治形成、とくに新しい環境・開発レジーム形成が、企業の社会的責任を問い、協同・共生的な経済と社会形成の可能性につながっていく期待が示されました。

*コメント:伊藤 誠氏/室井 遙氏
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続くコメントとしては、とくに交換関係(貨幣)からの変革がはたして生産関係、生産様式につながるのか(伊藤、理論経済学)、貨幣と市場の意味性の回復への期待(室井、経済人類学)などといった論点などが述べられました。

*総合討論: 「 現代資本主義の矛盾克服の可能性を考える 」
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今回は、資本主義の可変性や拡大増殖する力のダイナミズムを視野に入れつつ、その弱点と不安定性を超えていく契機を、どこに見出せるかに焦点をあてようとした点にあります。必ずしも明解な答えを提示できていませんが、「資本に転化しない貨幣」(交換様式)の実践的な試みの重要性、逆流(暴走)する資本主義を抑え込む公的(政治権力)な制度介入の方向とともに地球市民的な多様なレジーム形成の役割の重要性が、メッセージとしては示されているかと思います。

>國學院大學:http://www.kokugakuin.ac.jp/economics/kei03_00170.html

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カテゴリー:脱成長/脱消費 | 投稿者 xbheadjp : 2016年02月13日 21:59