持続可能な循環型農業のあり方(報告)

*名称:持続可能な循環型農業のあり方=原油150ドル時代の処方箋=

*日時:11月23日(月・祝)16:15開場/16:30開演〜18:30
*場所:ちよだプラットフォームスクェア505会議室(竹橋駅下車10分)
 千代田区神田錦町3‐21 TEL:03-3233-1511
 http://www.yamori.jp/modules/tinyd2/index.php?id=10
*参加:無料(申し込み先着30名で満席でした。)

*内容
1)基調レクチャー〔16:35〜17:00〕「真実味を帯びてきたピークオイル」
・中山 弘氏(2030ビジョン主宰/もったいない学会会員)
■プレゼン資料「真実味を帯びてきたピークオイル」:
http://www.2030vision.jp/app/download/091123.pdf

2)パネルディスカッション〔17:00〜18:15〕「アフターピークオイル農業」
*モデレーター
・篠原 信氏(独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構主任研究員)
■プレゼン資料「四つのパラダイム崩壊」:http://homepage3.nifty.com/sustena-life/091123shinohara.pdf
■参加者からの質問
・温室栽培のイチゴや牛肉といった贅沢な食生活を改め、食糧の偏在をなくせば人類が飢えることはないのではないか?(←食品環境負荷の見える化←贅沢税も?)
・日本の今の環境で農業に注力したら自給率はどの位まで上がるか?(←頑張って50%には持っていきたいですね)
*パネラー
・森 摂氏(オルタナ編集長)
・加藤 久人氏(懐かしい未来サティシュ講演会実行委員長)
・アントニーF.F.ボーイズ氏(もったいない学会)
■パネルディスカッション(敬称略)
森:プレピークオイルの段階でも投機で石油価格は高騰しうる。そのとき自動車に頼った社会はどうなるのか?それだけを考えただけでも充分に恐ろしい。
加藤:輸送にしろ肥料にしろ、石油がなければ今の農業は成り立たなくなるのは明らか。ローカリゼーションやトランジション・タウンの考え方を広めて、小さな活動を大きな解決に育てていきたい。
ボーイズ:タイのカレン族を研究してきたが、貧富の差は全体の破滅に繋がることが判っているので彼らはお金を絶対視していない。日本に関して言えば、ピークオイルに備えて15〜20年前から有機農業や農耕用家畜の準備しておく必要があると思う。もう手遅れかもしれない。まずは人口が減ることは良いことだと認めて欲しい。
森:人口減少は資本主義経済であるかぎり右肩下がりのを招くので避けたい。で、日本の消費者は賢いと言われているが、上辺の情報に踊らされているだけ。有機農作物の比率0.18%という現状をみても実際の意識は低い。時の農林水産大臣が日本の農業の将来を考えているとも思えないので、消費者の意識を変えなくてはならない。
加藤:農ある暮らしがシンプルでおしゃれなライフスタイルにしたい。いきなり本格的な有機農業に挑戦するのは体力的にも辛いが、1反の田んぼを3家族ぐらいでケアする自給自足的な有機栽培なら、カッコ良くできるはず。
ボーイズ:日本でも農業が機械化される前は田植えや稲刈りをお祭りとして楽しんだ。カレン族も辛い仕事はお祭りにして楽しむ伝統がある。みんなでやる農業は楽しいという雰囲気作りが必要だと思う。
篠原:結局お金の話につながるが、「エンデの遺言」にあるように資本主義は人から時間を奪ってしまう。人口減少が経済崩壊を招くのは利子が増えてしまうせい。この仕組みから脱却しなければ持続可能なオルタナティブな社会は築けない。

3)会場と意見交換/質疑応答〔18:15〜18:30〕特別ゲスト紹介も行いました。
大塚(NPO法人農商工連携サポートセンター):人類は定住をし始めた1万年前から人より豊かな生活を望むDNAを培ってきた。デニス・メドーズの「成長の限界」がまったく評価されないのもそのせいに違いない。だから意識変革には相当の努力が必要とされる。
谷崎テトラ(放送作家):飛行機が飛ばなくなる社会ではグローカルな世界。何も自給できないハワイ島の例では、地熱発電から電気分解で水素を取り出し、エネルギーばかりではなく肥料も取り出している。R水素なら石油の代替になる可能性がある。
吉田太郎(キューバ農業研究家):キューバは低石油エネルギーで有機農業が盛んで格差もないと言われるが、実際の食糧自給率は50%以下で、格差も広がっている。とはいえ、最低限のベーシック・ニーズが満たされているため、国民はそれなりに楽しんでいる。自給率の不足を補完しているのが、ベネズエラや南アフリカへの医療援助による外貨獲得だ。米国の軍事介入と違い人助けの医療はどの国も感謝される。なお、ベネズエラは自給率が3割もなかったが、キューバの農法を学んで現在4割近くまでアップさせた。チャベスは遺伝子組み換え農産物を憲法で禁止し、アグロエコロジー農法も憲法上で位置づけ、現在の農業の70%を環境に優しいアグロエコロジー農法に転換することを目指している。
篠原:アフターピークオイルの打開策は農業だけでなく社会や経済、教育までを含めて総合的に考えていかなければならい問題で、これといった解決策はありえない。なぜならそれには一人ひとりの意識改革が必須であるから。参加された皆さんも間違いを恐れずにどんどん提案していただきたい。

=登壇者略歴=
・中山 弘氏
1946年生まれ。本田技研にて研究開発、商品企画、事業企画、経営管理など多彩な業務を経験。2008年から”2030ビジョン”プロジェクト「一般国民(生活者)の視点で日本の将来ビジョンを考え、皆で共有し実現する」活動を主宰。
・篠原 信氏
1971年大阪生まれ。京都大学農学部進学。同大学院博士課程修了。富山県立大学で1年間助手を勤めた後、2000年から愛知県武豊町の「独立行政法人農業生物系特定産業技術研究機構野菜茶業研究所」に所属。
・森 摂氏
環境とCSRと志のビジネス情報誌「オルタナ」編集長。環境や健康、CSR(企業の社会責任)など、新しい(オルタナティブな)ビジネスの価値観で動く企業を積極的に報道するだけでなく、こうした企業と連携し、コミュニティをつくり、相互交流を図ることをミッションとする。
・加藤 久人氏
1957年東京生。立教大学文学部仏文科卒業。有限会社バショウ・ハウス主宰。環境、エネルギー、温暖化対策、リサイクル、雇用などに関する執筆活動を通じて、21世紀のライフスタイルを提案している。NPO法人懐かしい未来サティシュ講演会実行委員長。
・アントニーF.F.ボーイズ氏
1951年英国ロンドン生まれ。サウス・バンク大学で化学工学を学んだ後来日。茨城キリスト教大学英語英米文学科を卒業後、筑波大学大学院地域研究研究科で中国の農村経済を研究し修了。茨城キリスト教大学短期大学部英語科教授、和光大学経済学部教授を歴任。退職後、1年間タイのチェンマイを拠点にカレン族の農業と文化の調査を行う。現在は茨城県常陸大宮市の自宅で農業とフリーランスの翻訳・通訳業をしながら、東北大学大学院農学研究科非常勤講師を務める。

*主催:持続可能な生活を考える会(任意団体)
(トランジション・フォーラムという名称から諸事情により変更しました)
*後援
・ワールドシフトジャパン(一般社団法人設立準備中):
http://worldshift.jp/
・オルタナ(環境系雑誌社):http://www.alterna.co.jp/
・サステナビリティ日本フォーラム(NPO法人):
http://www.sustainability-fj.org/
・ミレニアムシティ(NPO法人):http://www.npo-mc.com/
・2030ビジョン(任意団体):http://www.2030vision.jp/

カテゴリー:持続可能な生活を考える会 | 投稿者 xbheadjp : 2009年11月19日 10:32